ひっかかりごと。

日常生活で引っかかったことを綴ります。

お年頃のティーン時代には背伸びして。太宰治の『満願』

私は高校時代に文学に目覚め、貪るように本を読んだ。

友達も多くない、もちろん彼氏なんていない優等生ぶった大人しい子だったけれど、その実妙な知識は豊富な耳年増だった。あの頃は性に関することを知りたくてたまらなかったのだ。文学もそういうことを知るために読んでいた節もある。小説ならどこでも堂々と読めるし、おまけに不埒なことを考えていても真面目な子だと思ってもらえるものね。

池田満寿夫の『エーゲ海に捧ぐ』なんかをどきどきしながら読んだり、チェザーレ・パヴェーゼの『美しい夏』に無垢な少女が大人の女になることの傷ましさを感じたり、谷崎潤一郎の『痴人の愛』のナオミのファムファタルぶりに興奮したりと、本を通してセクシュアルな疑似体験をしていたのだ。

そんな私が最も心を動かされたのは、太宰治のたった三頁しかない短編作品『満願』だ。(これは、今では青空文庫で無料で読めます。太宰治 満願

初めて読んだ時(確か、家の最寄駅の階段を昇りながらだった)、あまりの美しさに驚嘆した。エロティックなテーマを扱っていながらいやらしさは微塵もなく、どこまでも可憐で清らかなのだ。直接的でない表現も、情緒があって良かった。性と生の歓びに満ちていて、感動的なのだ。今でも私は性に対して、そういう感情を抱いている(もちろん、愛情を抱きあう者同士の行為に限るけれど)。

性を穢れたものと見なしてしまう人には、この美しく純な短編が効くかもしれない、なんて思ったり。